心の変化は身体から始まる:ポリヴェーカル理論を活用してあなたの心の安定を保つ方法

普段、あなたがイラっとしたり、ドキッとしたり、何か感情が出てきたとき、なぜあなたの中に感情が出てきたか気にしたことはありますか?実は、あなたが日々感じる心の変化や感情の波は、身体の反応から始まることが多いのです。驚いたことに、あなたの心の状態は身体の反応によって大きく影響を受けます。なので、身体の反応と感情の関係について理解することで感情を客観的に見つめることがで、コントロールする力を身に着けることができるようになります!この記事では、感情と身体の関係について「ポリヴェーガル理論」を基に説明をします。そして、ポリヴェーガル理論を知っておくだけでも、日々の生活に役立てられる具体的な方法についてお話します。

自律神経の基本形

自律神経には「交感神経」「副交感神経」が存在します。これは、あなたもどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?まずは、この交感神経と副交感神経の役割について述べます。

ここでのポイントは自律神経は、身体の自動的な機能(心拍数、消化、呼吸など)を調整する神経系だということです。

交感神経

「戦うか逃げるか」の反応を促進し、ストレスや危機的状況に対処するために心拍数を上げたり、エネルギーを動員したりします。

めんたるたろう

戦うか逃げるかというのは、まさに狩猟時代から存在する、生存戦略です。これは、現代の私たちにもあてはまります。例えば、苦手な上司などに対して、何か言われたりしたときに、ザワっとするのはこの反応が出ているためです。

副交感神経

身体をリラックスさせ、休息や消化の機能を促進します。従来の理解では、副交感神経はリラックスやエネルギーの保存に関与するだけと考えられていました。

めんたるらろう

従来では交感神経と副交感神経のどちらかが優位になることで、いわゆる「快」「不快」を感じるとされてきました。しかし、これからお話しする「ポリヴェーガル理論」では、さらにあなたの生活により密着した「社会的つながり」に応じて身体の反応が変わることに着目し、副交感神経をさらに細かく分けられました。これにより、さらに、あなたの生活での心の変化を細かく定義できるようになりました。

ポリヴェーガル理論とは?

めんたるらろう

少し小難しいですが、大事なお話なのでちょっとお付き合いくださいませ。
先ほどの、副交感神経が実は2種類あるという考え方です。それにより、ただ、リラックスだけでなく、うつ病などの「身体が凍り付く」感覚を説明できるようになりました。つまり、現代人の社会に密接な感覚に対する身体反応の説明がつくようになったのです。

ポリヴェーガル理論は、神経生理学者のスティーブン・ポージェス博士によって提唱された理論で、主に自律神経系が心と身体にどのように影響を与えるのかを説明しています。

ポリヴェーガルという言葉は2つの言葉から成り立っています。多重を意味する「ploy:ポリ」と迷走神経という神経の名前である「vagal」が組み合わさってできた言葉です。ポリヴェーガル理論ではこの迷走神経が複数存在するとし、それらの活動具合であなたの感情が作り上げられるという理論になります。

このポリヴェーガル理論によると、自律神経系は交感神経、副交感神経、だけでなく、副交感神経をさらに「腹側迷走神経」「背側迷走神経」に分けられました。この3つの異なる神経群から構成されており、それぞれが異なる心身の状態を引き起こします。それでは、それぞれの神経が活発になるとどの様にあなたのこころが動くのか見てみましょう。

1.腹側迷走神経複合体

社会的なつながりと安定性をサポートするシステムです。この神経経路は、あなたの顔の表情、声の調整、耳の動きなど、社会的交流に関する機能に影響を与えます。リラックスしているときや安全を感じているときに活性化します。例えば、社会的な絆を築く、安心感、落ち着きのような状態のときに優位に働いている神経です。

2.交感神経

危機的な状況に対して、身体を即座に動かすためのエネルギーを供給します。心拍数を上げ、アドレナリンを放出し、ストレスに対する「戦うか逃げるか」の反応を促します。例えば、戦う、逃げる、危機的な状況での緊張感があるときに優位に働いている神経です。

3.背側迷走神経複合体

極端な危険や過剰なストレスに直面したとき、身体を防御的にシャットダウンさせるシステムです。これは「凍り付き」反応とも関連し、極端なストレス下での無力感やかい離を引き起こします。例えば、極端なストレス下での麻痺、意識喪失、消化機能の低下が起きているときに、優位に働いている神経です。

それぞれ、3つの新駅の特徴を以下に表にします。

神経の名前日常の反応身体反応状態の意味
腹側迷走神経リラックス
安心
社会的な触れあい
心拍数が穏やか
呼吸が深くゆっくりと安定
顔や声の表情が柔らか
身体が「安全である」と感じており、社会的なつながりや交流に適した状態
交感神経緊張している
焦っている
闘うか逃げるかの反応
心拍数が上がる
呼吸が浅く早くなる
筋肉が緊張
手汗をかくことがある
身体が「危険やストレスに対処しよう」としている状態。短期間であれば適応的な反応ですが、長引くと健康に悪影響を与える可能性がある
背側迷走神経無気力
脱力感
逃避したい気持ち
極度の疲労や絶望感
心拍数が極端に低下
エネルギーが枯渇した感じ
消化機能が低下
身体がシャットダウンする感覚
身体が「極端なストレスや危険に対処しきれない」と感じており、自己防御のためにエネルギーを節約しようとする
ポリヴェーガル理論における神経の特徴

日常を快適に暮らすためにあなたが心掛けること

ポリヴェーガル理論を理解することにより、あなたの今現在の状態を客観的な視点で把握することが可能になります。さらに、原因が分かることになるので、対策がしやすくなります。具体的には、あなたが安全安心な状態は「腹側迷走神経が優位な状態」であるということです。一方で、「交感神経や背側迷走神経が優位な状態」にあるときは、気持ちが「高ぶっている」か「落ち込んでいる」かのどちらかなので、気持ちを落ち着かせるか、少し活発になるような行動をとるかのどちらを心掛ければよいということになります。つまり、あなたは自分の状態を腹側迷走神経が優位な状態に持っていけばいいということが分かります。

めんたるたろう

あなたの状態は「高ぶりすぎ」「落ち込みすぎ」のどちらかにいると危険であり、そこから離れるために、気持ちを落ち着かせたり、気持ちを持ち上げたりを意識することにより、こころが健康な状態に持っていけるということになります。

日常生活であなたの状態を知る具体的な対策

めんたるたろう

ここまでは理論的なお話をしました。ここからは、日常生活の中であなたの状態を観察する具体的な方法についてお話したいと思います。

ポリヴェーガル理論はあなたの心の状態と身体の状態を対応付ける一つのヒントになったのではないでしょうか?自分の心と身体の反応を意識することで、日々のストレスや感情の揺れをうまくコントロールすることが可能です。以下に、具体的な実践方法をいくつか紹介します。

1.呼吸に意識を向ける

呼吸は、自律神経に直接働きかける手段の一つです。焦りや不安を感じたときは、ゆっくりと深呼吸をして副交感神経を活発化させましょう。深い呼吸をすることで、身体がリラックスし、心も次第に落ち着いてきます。

2.身体の感覚に集中する

あなたの身体がどのように感じているかに意識を向けることで、感情を客観的に捉えることができます。例えば、肩がこわばっている、胃が重いといった感覚は、身体がストレスを感じているサインです。これに気づくことで、心がどう反応しているのかを理解する手掛かりになります。

3.日記をつける

日々の身体の反応とそれに伴う心の変化を記録することで、どのような状況であなたの神経系がどのように反応するのかを把握できます。これにより、ストレスのトリガーや自分にとってのリラックス方法がより明確になります。

めんたるたろう

これらのアプローチは「意識して」行うことが大切です。一見、当たり前のことばかりですが、あなどれません。あなた自身の状態を「自覚」するだけでも、随分と心持が変わってきます。

それでも感情をコントロールできないときは

ポリヴェーガル理論は、自律神経系と感情の関係を理解し、感情のコントロールをサポートするために非常に有効なツールです。しかし、あくまで理論であり、実践的にコントロールするのが難しい場合があります。例えば、極度なトラウマを実は抱えていたり、ストレス状態が続きすぎてしまっている場合です。

そんな時に、私がいつもおススメしているのがヒプノセラピーです。

ヒプノセラピーの効果

ヒプノセラピーは、睡眠状態を利用して潜在意識にアクセスし、深く根付いた感情や思考パターンを変えることを目的としたセラピーです。睡眠状態では、通常の意識状態ではアクセスしにくい深層の感情や記憶にアプローチすることができます。これにより、ポリヴェーガル理論の実践では解消しきれない感情やストレス反応を改善することが可能です。

まとめ

ポリヴェーガル理論を理解することで、あなたの感情の変化が身体の反応から始まることを知り、自分自身の心と身体の状態を客観的に捉える力を養うことができます。これは、日々のストレスや感情の揺れに対処し、心の安定を保つために非常に有効です。

しかし、理論を知っていても、感情のコントロールが難しいと考えることがあるかもしれません。特に、過去のトラウマや長期間続くストレスが原因で、感情の反応が強く現れる場合です。そのようなときには、ヒプノセラピーが強力なサポートとなります。ヒプノセラピーを通じて、潜在意識にアピールし、深層の感情や思考パターンを改善することで、心身のバランスを取り戻すことができます。

ポリヴェーガル理論とヒプノセラピーを組み合わせることで、あなたの生活にさらなる安定と心地よさをもたらされることができるでしょう。これからも、ぜひ、あなたの心と身体の声に耳を傾け、日々の生活に役立ててください!